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最高裁判所第三小法廷 平成6年(行ツ)66号 判決

東京都杉並区荻窪三丁目七番二三-三〇二号

上告人

日下正一

被上告人

右代表者法務大臣

中井洽

右指定代理人

村川広視

右当事者間の東京高等裁判所平成五年(行コ)第四九号過誤納金返還請求事件について、同裁判所が平成五年一一月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って、又は原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

(平成六年(行ツ)第六六号 上告人 日下正一)

上告人の上告理由

第一 原判決は昭和六三年九月八日言渡された確定判決原告日下正一被告荻窪税務署長間の東京地方裁判所昭和六三年(行ウ)第三四号所得税更生処分無効確認請求事件と抵触する。すなわち、右確定判決は「原告は、四八年分再更生及び四八年分賦課決定並びに四九年分更生の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えである過誤納金還付請求の訴を提起することが法律上万能であり、これによってその目的を達することができる関係にある」と判示した。

よって上告人は右確定判決にしたがって被告荻窪税務署長を国に改め、本件東京地方裁判所平成四年(行ウ)第一八五号過誤納金返還請求事件を提起したものであるから、原判決は正しくこれと抵触する違法がある。

第二 原判決は、予断偏見をもって本件主位的請求を抗告訴訟、予備的請求を荻窪税務署長を被告と同視する無効確認請求事件と早合点し、平成四年一二月一六日開廷の口頭弁論期日に即日結審して、判決に影響を及ぼすことが明らかな重要事項につき審理不盡、判断遺脱した違法がある。

一 上告人は株式会社飯能光機製作所(以下「訴外会社」という)と雇用契約を締結したから毎月賃金として支払われた所得は正真正銘の給与所得であるところ、本件更生等の対象は訴外会社が公序良俗に反する手段をもって虚構した事実所得であるから民法九〇条により当然無効であるにかかわらず、原判決はこれが事実を誤認した違法がある。すなわち

1 上告人は訴外会社と昭和四三年三月一五日同社従業者区分(別紙一)における非社員の学識経験者として常勤嘱託の期限を定めない雇用契約(以下「本件契約」という)を締結した(別紙二)。

2 右労働対価は取締役工場長柴田直の報酬月額一五万円の八割相当額一二万円を初任基本給とし、前月二一日から当月二〇日までの一か月間を賃金計算期間とし、当月二〇日締切りで当月二八日に定期に通貨で直接本人払いの方法で支払いを受けたら、上告人の賃金は当然に給与所得である。

3 さて訴外会社は資本系列は旭硝子株式会社(以下、「旭硝子」という)の完全出資の子会社であり、また営業系列は日本光学工業株式会社(以下「ニコン」という)の専属下請工場であって、昭和三二年六月有限会社飯能光機製作所を旭硝子が買収して資本金三〇〇〇万円の一人会社とし、昭和四二年二月一日現在、代表取締役社長は旭硝子の代表取締役社長倉田元治が兼務し、固有従業員二六五名(九七名)、旭硝子派遣役員二名、職員六名計八名(三名)をもって構成する「植民地的会社」であった。

したがって、固有従業員は自己保全のため強力な労働組合「総評化学同盟飯能光機支部」(以下「労組」という)を結成し、組合幹部は組長クラスで完全に部下を掌握して事実上訴外会社を支配していた。

4 そして、夙に労働協約として主要又は重要人事につき労組と事前協議してその同意を得た後実施する協約が存在していたから、学識経験者上告人の雇用は労組に極度のショックを与える人事のため、当然に事前協議に付すべき義務があるのに総務課長中山秀夫(以下「総務課長」という)は本件契約を事前協議に付することを怠ったのみか、却って団体交渉で上告人と準委任契約したと虚偽の報告をして労組を欺罔した。これがため総務課長は労働協約違反と労組欺罔が発覚すれば忽ち会社不信が爆発し、自己の進退は勿論、会社の倒産も憂慮すべき事態が発生した。

5 そこで総務課長は右発覚を回避すべく上告人と労組との接触を一切遮断し(別紙三)、同時に労組からの証拠開示要求に備えて上告人の賃金が給与所得であるのにこれを事業所得に粉飾した。

(一) 法人において経費の支出には正当債権者の適法証憑(請求書)を絶対不可決の支出要件とするところ、雇用契約の当事者上告人から毎月賃金支払の請求書を徴することは著しく経験則に反し、また労基法二四条にも違反するばかりか、忽ち詐欺事実が上告人に推察され、かつ事業所得の目的とする経費にもならないから、請求書を徴しえない場合の非常手段として領収書を稟議決済に付議して請求書代用とする会計手続に着目し、次のとおり、粉飾手段を組織的計画的から継続的実行した。

(1) 上告人に対し毎月賃金として計算し約旨に基づく賃金支払と誤解させ、

(2) 現金授受の事実証明を口実として上告人の領収書を騙取し、

(3) 行使の目的をもって騙取した領収書を稟議決裁に付して請求書代用文書に変遷し、

(4) 変遷した請求書代用文書を債権者作成証憑として支払伝票を起票し、

(5) 支払伝票摘要欄に事業所得とすべく「謝礼」及び「旅費」と記載し、

(6) 上告人の作成する領収書に会計担当の要請と称して「指導料」ないし「経営コンサルタント料」日数分を記載させ、

(7) 領収書氏名に「経営コンサルタント」の肩書を冠記させ、

(8) 住所を省略させて「日本生産性本部若谷会」と記入させ、

(9) 支払伝票の勘定科目は「人件費、雑給」と仕訳すべきにもかかわらず、ことさら「共通経費、雑費」と仕訳し、

(10) もって名目実質ともに給与所得であるにかかわらず事業所得と虚構したものである。

(二) ところで上告人は訴外会社に毎月一二日出勤する約定であったから、右会計手続上請求書を徴しえない場合に該当せず、前記非常手段は重大かつ明白な瑕疵あり違法である。

(三) 仮に本件所得が事業所得であれば訴外会社には上告人が作成した報酬基準に基づく請求書が毎月一枚必ず存在すべきところ、上告人は、右請求書を発行したことが全くないから、本件所得が事業所得となる余地は全くない。

6 よって右事業所得は訴外会社が組織的、計画的かつ継続的に公序良俗違反を累犯したものであるから、民法九〇条に照して当然無効のものである。

7 右事実は原告日下正一、被告所沢公共職業安定所長間の浦和地方裁判所昭和五三年(行ウ)第六号雇用保険被保険者資格取得否認処分取消請求事件において被告が提出した乙号書証によって初めて知った事実である原判決は、上告人が被告と国とするにかかわらず、

1 第一、原告の請求の趣旨「二 予備的請求」において主語を「荻窪税務署長が」と恣意的に訂正

2 第二、事実の概要「一 当事者間に争いがない事実」において主語を1、3は「荻窪税務署長」と恣意的に訂正

した各判断であるから理由にそごがある。

三 上告人の主位的請求は給与所得であるから源泉徴収義務者訴外会社が憲法八四条、三一条及び所得税法二八条、一八三条ないし一九八条に基づいて徴収ないしは年末調整などをなすべきにかかわらず、被告が法律上の原因なく事業所得として更生等の名目で原告に五万二四〇〇円の損失を蒙らせたから、被告国は上告人に対し右損失相当額を返還する義務があるというにある。

四 上告人の予備的請求は給与所得の源泉徴収が国と源泉徴収義務者との法律関係であって納税者とは直接の関係がなく飯能税務署長が上告人の給与所得につき訴外会社に対し本件更生等をなすべきにかかわらず荻窪税務署長が納税者上告人に対し給与所得の本件更生等をしたのは、憲法八四条、三一条、所得税法二八条、一八三条ないし一九八条に違反する違法があり無効であることの確認を求めたものである。

五 右無効確認の利益は、訴外会社によって虚構された事業所得を取消し、給与所得の原状に回復し、労働欺罔のため発生中の未払賞与その他の賃金一切の支払を受け、約旨に基づく退職手当を請求し、地位継続確認及び社会保険審査会昭和五一年(健厚)第一五号再審査請求事件につき社会保険被保険者資格確認を得る現在の利益を有し、同時にバックペイ一年につき六〇〇万円の給与所得に対応する納税義務を履行する地位もある。

第三 原判決は、本件更生等処分の前提たる事業所得を追認し、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある。

一 「訴外会社は虚構した事業所得を上告人に隠蔽するため源泉徴収義務者として給与所得たると事業所得たるとを問わず「支払明細書」を交付する義務があることを知りながら、あえて昭和四二年三月分から同五〇年八月分まで右支払明細書の交付を一切怠って所得税法二四二条八号に規定する罰則をもって強行される同法二三一条に違反する違法があるにかかわらず、原判決はこれが判断を逸脱して虚構した事業所得を追認した違法がある。

二 訴外会社は、労組及び上告人を欺罔する手段として、給与所得源泉徴収簿の作成義務のあること及び年末調整の義務があることを知りながら、ことから毎年上告人の源泉徴収簿の作成及び年末調整を怠って所得税法二四〇条一項に規定する罰則をもって強行される同法一九〇条に違反する違法があるにかかわらず原判決はこれが判断を遺脱して虚構した事業所得を追認した違法がある。

三 訴外会社は、毎年給与所得者上告人に源泉徴収票を交付すべき義務のあることを知りながら、納税者には国税通則法及び所得税法による行政救済の方法が全くない立法の欠缺を寄禍とし、また飯能税務署長による税務調査の皆無を確信して毎年上告人に支払調書を交付したところ、毎年異議の申立があるにかかわらず言を左右にして応ぜず事業所得の虚構を実現して所得税法二四二条六号に規定する罰則をもって強行される同法二二六条に違反する違法があるにかかわらず、原判決はこれが判断を遺脱して虚構した事業所得と追認した違法がある。

第四 原判決には憲法の解釈の誤りがある。すなわち、

一 原判決は、憲法八四条、三〇条、三一条に違反する違法がある。

1 憲法八四条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と定め、いわゆる租税法律主義を規定したもので租税の賦課徴収のことはすべて形式上の法律によって規定し、当該法律に基づいて厳格な賦課徴収を行うべきであるとする原理である。したがって租税法律主義のもとでは税法規の解釈に関しては「疑わしきは国家の利益に反して」という法理が論理的に成立する。

これを本件更生等の相殺に即してみれば、右前提において源泉徴収方式に反し訴外会社総務課長が自己保身のために虚構した事業所得であり、右結果において賦課徴収方式に準拠したものであるから法律の定める条件が不存在というべく、憲法八四条に違反する違法がある。

2 憲法三一条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定め、いわゆる適法手続の原則を定めた規定であり、ここでは「適正な」という文字は見られないが、この原則の歴史上、思想上の沿革からみて「法律の適正な手続」の保障を定めたものと解される。

これを本件更生等の相殺に即してみれば荻窪税務署長による賦課徴収手続ではなく源泉徴収義務者訴外会社が所得税法一八三条ないし一九八条の規定によるべきにかかわらず全くその手続でないから、憲法三一条に違反した違法がある。

3 憲法三〇条は「国民は、法律の定めるところにより納税の義務を負う。」と定め、ここに法律とは租税法律主義の原則による所得税法を指すことは明らかである。

しかるに上告人は中堅給与所得者であって、昭和四九年分以降訴外会社から受ける年収は約六〇〇万円であるから源泉徴収税額もまた相当多額であるところ、給与所得者(特に高額者を除く)が事業所得の確定申告すれば、所得税法二八条、二七条各二項の差異により、忽ち損失申告となることを知りながら、また知りうるべきにかかわらず、訴外会社は上告人にあえて支払調書を交付し上告人をして昭和四二年分から昭和五〇年分(昭和四八年分、昭和四九年分を除く)まで荻窪税務署長に毎年損失申告書を提出させた。

この事実は訴外会社総務課長の詐欺利得の手段として実行されたものであるから上告人の納税義務を積極的に訴外した悪質なものであるから、憲法三〇条に違反する違法がある。

4 憲法三二条は「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と定める。しかるに被上告人は上告人が訴外会社によって違法かつ恣意的に給与所得を事業所得に虚構されても国税通則法及び所得税法または行政不服審査法に納税者に対する行政救済の方法を全く設けず、いわゆる立法の欠缺によって上告人に裁判を受ける権利を侵害したから憲法三二条に違反する違法がある

5 憲法九九条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」と定める。

しかるに被上告人代表者法務大臣は国家公務員であるから当然に憲法尊重の義務を負うばかりか、正義の実現に率先実行の模範を示すべきところ、右尊重を所得税法に限定して考えれば、憲法八四条に基づいて制定された所得税法を公正に実施し、また当然に寡額より多額の税収を図るべきにかかわらず、本件過誤納税額僅々五万二四〇〇円に恋々として固執して上告人に対し適法な給与所得から源泉徴収されるべき給与所得年額約六〇〇万円その他退職所得二〇年分約四〇〇〇万円に対する多額の源泉所得税額を闇に葬り去ることは憲法九七条に違反する違法があるからというべきである。

第五 原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな最高裁判所の判例に違背する判断遺脱がある、すなわち

およそ業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得(同法二七条一項同法施行令六三条一二号)と給与所得(同法二八条一項)のいずれに該当するかを判断するにあたっては、税務負担の公平を図るため、所得を事業所得、給与所得に分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならない。したがって、弁護士の顧問料についても、これを一般的抽象的に事務所得又は給与所得のいずれかに分類すべきものではなく、その顧問業務の具体的態様に応じて、その法的性格を判断しなければならないが、その場合、判断の一応の基準として、両者を次のように区別するのが相当である。すなわち、

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価、として使用者から受ける給付という。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものかどうかが重視されなければならない(最高裁昭和五六年四月二四日判決、昭和五二年(行ツ)第一二号)

第六 結論

一 諾成双務契約の雇用契約において使用者が内部手続において契約変更又は給与所得を事業所得に区分しても雇用契約に何ら効力を及ぼすものではない。

二 給与所得は、時間的空間的に拘束されて労働した対価として使用者が賃金計算した所得である。

三 事業所得は、債権者から提出された請求書によって発生する役務対価の経費であって、請求書の存在しない役務対価には適用がない。

四 本件更生等の処分は前提に公序良俗に反することが著しい無効原因が存するから事業所得としては無効である。

別紙一 従業者区分

<省略>

別紙二

第一 上告人は訴外会社と昭和四二年三月一五日同社従業員区分(別紙一)における非社員の学識経験者として期限の定めない常勤嘱託の雇用契約を締結したがその経過は次のとおりである。

一 訴外会社は一般に労働分配率の限界が四〇パーセントであるのに当時八八パーセントに達する赤字会社であった。

1 取締役工場長柴田 直(以下「工場長」という)は旭硝子川崎工場長を定年退職し、同社子会社の訴外会社に取締役工場長として昭和三八年三月一日着任し、いくつかの新規設備投資を実施したにかかわらず全く生産性の向上が見られない原因が「悪平等、高賃金、低能率」を目標とする関係会社の二重構造の厚い障壁に直面して労組の訴外会社を事実上支配の実体を知り、訴外会社の喫緊かつ最重要課題は労使関係と判断した。

2 労組に手を焼いた工場長は、遅蒔きながら旭硝子屈指の労政専門職杉本久敬(以下「副長」という)を同社姫路工場から抜擢して昭和四一年八月二三日工場副長に据え、労使関係の安定化と企業体質の改善に着手したが、着任当初における副長は、総務課、業務課、製造課及び検査課の四課を事務統括し、同時に自ら総務課長、総務係長、庶務班主任及び労務班主任まで兼務のやむなき羽目におかれてルーチンワークに忙殺される始末で、手足と頼む男子準職員荻野和夫、横手勝克、野口秀夫は飯能高等学校卒業の新規採用者で僅々二、三年の未熟な事務職にすぎなく経営管理の企画・立案の経験を全くもたなかった。

3 そこで工場長は旭硝子に総務課長の出向を要請したところ、昭和四一年一一月二四日同社千葉工場厚生係長中山秀夫(以下「総務課長」という)が着任して体質改善への陣容は調ったものの右総務課長は昭和一八年一二月山口県立下関商業学校卒業の新規採用者として同一九年一月一〇日旭硝子に入社して二十余年間専ら厚生専門職として歴任したため、労使関係、賃金問題及び経営組織に疎く、昭和四二年三月六日付で第一次回答日を同年三月一九日と指定する労組の春闘要求に行詰まって対策が麻痺状態に陥った。

4 副長は、焦眉の難局打開のため旧制静岡高等学校の同期生で引続き親交関係にあって、教育訓練、人事管理において令名の高い労働省職業訓練局主任職業訓練指導官)石川淳二(以下「主任指導官」という)に対して「一流の大家を避け中堅クラスで社内コンサルタント勤務可能な人材」の斡旋を依頼したところ、主任指導官は労働省の外部団体の社団法人日本労務研究会常務理事荻阪剛に適材の推せんを求めて上告人が紹介され、同年三月一二日一八時伊勢丹会館で主任指導官は副長と同席して上告人を面接し、人物、見識及び能力を判定した上、同年三月一五日、工場長が重ねて直接面接を実施して即日工場長在室の工場長室で雇用契約(以下「本件契約」という)を締結した。

二 総務課長は、訴外会社の庶務、人事、労務の責任者であるとともに自己の業務分掌について副長立会のもとに本件契約を締結した。

1 上告人は本件契約に先行して総務課長に役務対価報酬の前提となる経営コンサルタントの業務執行方法を図解した「診断の方式」のネガを預けてコピー二枚を依頼したところ、総務課長は上告人の承諾を得て右ネガの上部左隅に<5>と記載し、庶務係事務員の武藤富子に青焼二枚を指示して持参させたから上告人はその中一枚を控とし他の一枚を訴外会社に提出しこれに従ってコンサルタントの業務執行方法と役務対価について説明した。

2 社外経営コンコサルタントの業務執行方法には次の四つの方式がある。

(一) 勧告方式とは、企業の求めに応じて改善案を出すまでを業務とする方式であって、まず現状についての詳細な調査、分析を行ない、その事実に基づいて改善案を作成し提出するまでを業務とし、その採否及び実施については企業に任せる方法をいい、商品は改善案であるからコンサルタントは改善の成績については責任を負わない。役務対価は上告人の報酬基準に基づいてテーマ一案件一件主義で報酬計算して請求書を提出する。

(二) 維持方法とは、改善案で勧告したテーマ一案件別に勧告後標準維持のため長期間にわたって定期的に実施援助を行なう方法をいい、役務対価は上告人の報酬基準に基づいてテーマ一案件一件主義で報酬計算して請求書を提出する。

(三) 教育方式とは、指導方式ともいい、作業や事務の方法の改善と並行して担当する従業員を集団的に教育訓練を通じ間接的に改善の実施援助を行なう方法をいい、また新入社員の教育訓練、経営者、管理者の教育も含まれる。役務対価は上告人の報酬基準に基づいてテーマ一案件一回主義の基本額に実施自給を加算する報酬計算して請求書を提出する。

(四) 顧問方式とは、積極的コンサルタント活動を一切しないで、問題発生のつど、経営、管理、監督職の求めに応じて意見または勧告を口頭で行なう実施援助をいい、役務対価は上告人の報酬基準に基づいて一日一回主義で報酬計算して請求書を提出する。

3 要するに社外経営コンサルタントの業務執行方法は、通常勧告方式の企業診断として行われ、

(一) 準委任契約にさいしてテーマとその範囲及び程度を特定し、

(二) 一カ月間において六日とか一〇日とかを連続滞在調整分析するもので、

(三) 一案件の見積稼働日数に応じて契約期間を決定し、

(四) 企業診断の結果を勧告書(調査書)として報告するもので、

(五) 役務対価はテーマ「案件」一主義の契約金となるほか、旅費、滞在費その他の経費は企業負担となり、

(六) 契約締結は合意内容について則時「嘱託契約書」二通を作成し当事者各一通を交換保管するものである。

4 訴外会社は従業員の管理水準が低いため社外経営コンサルタントの準委任契約では画餅に陥り改善が無意味となる可能性が高いとして次のとおり社内事情を明らかにした。

(一) 社内に企画立案の人材が現存しないこと

(二) 安定的労使関係確立のためには抜本的企業体質の改善が先決であること

(三) 体質改善は長期間を必要とするから契約期間を設けないこと

(四) そのために雇用契約として賃金として経済的に実施したいこと

(五) 会社は現に赤字経営であること

三 そして訴外会社は、抜本的体質改善を長期的かつ経済的に実施するためと同時に複数部門の改善を早期実現を期して上告人に雇用契約を要請した。

1 そこで上告人は訴外会社に社内経営コンサルタント業務執行方法には次の二つの方式があることを説明した。

(一) 代行方式とは、企業の経営職、管理職の職位を代行して改善を直接的に実施する方式をいい、役務対価は役員報酬または管理職給与であって当然に会社が賃金計算する。

(二) 実施方式とは、あらかじめテーマとその範囲と程度の特定なく、社内専門職として随時必要に応じて特命事項の調査、研究、分析、企画及び立案を担当し、職制を通じて行なう実施を推進調整する方式をいい役務対価は管理職給与であって当然に会社が賃金計算する。

2 訴外会社は実施方式と完全に一致するニーズである旨を述べ、わが意を得たとして何ら躊躇することなく即座に実施方式を要請し、雇用契約であることを認識して一カ月の稼働日数全部の投入を求めて上告人を専属とした。

3 賃金は、工場長の報酬月額が一五万円であることを打明け、社内秩序維持上その八割相当額の一二万円を初任基本給に決定して過不足を出勤日数でバランスの調整を図ることに合意した。

4 上告人は訴外会社に賞与半期毎の支給月数を聞いたところ「三カ月分」との回答を得たので出勤日数は勧告方式では一二万円六日間、実施方式では賞与半期毎三カ月分、退職引当金給一カ月につき三日分と付加して基本給一二万円一二日間を承諾した。

5 賃金支払形態は前記経緯から日給月給とし、一カ月一二万円一二日分を生活保障給とした。

6 訴外会社は上告人と雇用契約が成立したので即日一一時ごろ上告人を会社組織に編入し、事務室二階会議室に設けた春闘対策室に案内し、即刻副長の指揮命令により労組に回答すべき年齢別賃金曲線の策定に従事し雇用契約の効力を発生させた。

四 それから訴外会社は上古人を副長のスタッフとしてその指揮命令のもとに時間的空間的に拘束して次のとおり労働させた。

(一) 職位は専門職の社内経営コンサルタント

(二) 職務は副長が会社内外の諸情勢に対応して随時必要に応じて命令する特命事項の処理

(三) 特命事項は複数

(四) 職能は調整、研究、分析、企画、立案及び推進または調整

(五) 監督は副長の一般的監督

(六) 報告は副長に直接報告

(七) 出勤は訴外会社専属として原則として一カ月一二日

(八) 出勤日は訴外会社の指令した日

(九) 勤務時間は一日につき七時間以上、但し一二時から一三時までは休憩時間

(一〇) 勤務場所は個室(四八平方メートル)

(一一) 机と椅子は副長の片袖スチール製事務机と肘付回転椅子に並列する同型同大の事務机と肘付回転椅子の専用

(一二) 通勤は往復所要時間五時間を往路は電車通、復路はタクシーの現物給付

別紙三

総務課長は労働協約に違反し、かつ労組を欺罔したばかりでなく、上告人に対しても労働契約に違反して欺罔し、あえて二重背任をしたが、その手段は次のとおりである

一 訴外会社は第一に労働欺罔を隠蔽する手段として両者の接触を遮断して計画的に真実の発覚を阻止した。

1 訴外会社は構内に人気が見えない時間帯の一〇時ごろに上告人の出勤時刻を指定した。

2 上告人と労組との接触を阻止するため退場時刻をそのつど決定し事務所玄関から復路タクシーに乗車させた。

3 訴外会社の昼食は全従業員に社員食堂で給食のところ、上告人には社員食堂の利用を差止め、近隣食堂からの出前食とした。

4 訴外会社は上告人に対し差別待遇して社内行事に一切参加させなかった。

5 労働幹部との面接調査は人事、労務、厚生の必須要件であるにもかかわらず、訴外会社はこれを厳禁とした。

6 現場調査を必須要件とする資材管理、購買管理及び生産管理については全く着手させなかった。

7 上告人は訴外会社に八年有余勤務したにかかわらず工場現場を一度も見せたことがなく、常に机上の立案であった。

8 訴外会社は上告人に常時個室において鑵詰の作業をさせた。

9 一二時から一三時までの休憩時間は自由利用であるにかかわらず室外散歩を認められなかった。

10 勤務場所の個室には特定の者のほか自由に出入させなかった。

11 上告人の片袖スチール製事務机と肘付回転椅子と同型同大の副長の事務机と椅子が並列された。

12 上告人の担当文書は鍵のかかる片袖引出に常時厳重保管であった。

二 総務課長は第二に用意周到にも診断の方式図を除き、上告人の雇用契約とみられる一切の文書を皆無とした。

1 人事に関してはすべて書面による稟議が絶対的に必要不可欠手続とし、かつ永久保存文書であるにかかわらず上告人の雇用契約についてはことさらに書面稟議を怠った。

2 また書面稟議懈怠の結果上告者の履歴書を不要とした。

3 総務課長は賃金計算上必要不可欠の文書であるにかかわらず、上告人のタイムカードまたは出勤簿をことさら省略した。

4 総務課長は、上告人の出勤記録として、昭和四二年三月一五日から同四五年九月三〇日までは荻野和夫、同年一〇月一日から同五〇年七月二五日までは藤田裕に非公式メモを作成させた。

5 また同時に上告人に対し個室に準備したカレンダーに一週間単位で出勤日を記入させた。

6 訴外会社は毎年四月分からベースアップ及び定期昇給を実施するところ、上告人を差別待遇し実施の延伸または仮装文書を作成してから行った。

7 総務課長は上告人に対し約旨に基づく半期毎に月額賃金三カ月分の賞与があるにかかわらず、ことさら未払いとした。

8 訴外会社は上告人に対し昭和五〇年七月二五日即時解雇にさいして約旨に基づく勤続一カ月につき三日分の退職金があるにかかわらず、ことさら未払いとした。

三 しかしながら総務課長が上告人の給与所得を事業所得に虚構してなされた次の強行法規違反は民法九〇条によりすべて無効というべきである。

1 訴外会社は上告人に対し雇用契約締結に当って賃金、労働時間その他の労働条件を明示した書面の交付を怠ったことは、労働基準法一二〇条で強行される同法一五条、同法施行規則五条に違反する違法がある。

2 訴外会社は昭和四二年三月一五日上告人を従業員としたにかかわらず労働者名簿に記入しなかったことは、労働基準法一二〇条で強行される同法一〇七条に違反する違法がある。

3 訴外会社は上告人の賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入する義務あるにかかわらず、これを怠ったことは、労働基準法一二〇条で強行される同法一〇八条、同法施行規則五四条、五五条に違反する違法がある。

4 訴外会社は雇用保険法五条に定める適用事業であるにかかわらず、あえて上告人を所沢公共職業安定所長に被保険者届を怠ったことは、同法七条に違反する違法がある。

5 訴外会社は上告人が、健康保険法の適用事業の強制被保険者であるにかかわらず、あえて東京都知事に上告人の被保険者届を怠ったことは、同法一三条に違反する違法がある。

6 訴外会社は厚生年金保険法の適用事業所であるにかかわらず、ことさら東京都知事に上告人の被保険者届を怠ったことは、同法六条、九条に違反する違法がある。

7 訴外会社は、労働者の社会的身分を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならないにかかわらず、既述のとおりことさら上告人を差別的取扱いをしたことは、労働基準法一一九条で強行される同法三条及び憲法一四条に違反する違法がある。

四 総務課長は第三に労組からの証拠開示要求に対応すべく積極的に内容虚偽の事業所得文書を作成行使した。

1 総務課長は一方上告人に対し毎月賃金計算して約旨に基づく「賃金」の支払いをなし、他方上告人関知の余地なき支払伝票において事業所得とすべく債務を「謝礼」とした。

(一) ここに「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいい(労働基準法)一条)、恒常的継続的に発生する労働の対償であるから、あらかじめ労働契約で全額について合意があり、また支払いにさいし支給明細書が交付される。

(二) これに対し「謝礼」とは、臨時単発的に発生する役務の報償であるから、あらかじめ役務契約で金額についての合意がない代りに、感謝の誠意をこめて贈与される金品をいい、特に現金給付のときは「のし袋」に封入し「寸志」「車代」「謝礼」などを表記し通常源泉徴収所得税は依頼者が負担して手取金として支払われる。

(三) 会計手続において「賃金」は人件費として給与所得となるが、「謝礼」は経費として事業所得に区分され、給与所得は労務主費として定期給与の区分、「給料」「賃金」(狭義)「雑給」の何れかに仕訳されるところ、上告人は嘱託であるから「雑給」であり、労務副費の「法定福利費」が付随する。しかるに「謝礼」は、経費であるから労働副費は付随せず「共通経費、報償金」と仕訳される事業所得である。

(四) かくて総務課長は、本件契約の責任者として雇用契約を締結した上、毎月賃金計算して上告人に賃金の支払をしながら、行使の目的をもって支払伝票に賃金とは全く異質の債務であるにかかわらず、ほしいままに「謝礼」と記載したことは、内容虚偽の文書を作成し、かつ稟議に行使した違法がある。

2 総務課長は、行使の目的をもって上告人から有印受領書と毎月騙取しこれを有印請求書に変造して上告人の給与所得を事業所得に虚構した違法がある。

(一) およそ法人(訴外会社)の経費支出は、債権者から徴した請求書に基づいて支払伝票を起票し、提案者(総務課長)は支払伝票に請求書を添え稟議決裁を得て、債権者、債務、金額について請求書と受領書を突合わせ、両者の完全一致を確認し、同時履行をもって支払い実行するものである。

(二) しかるに本件契約は雇用契約であって、労働基準法二四条により訴外会社が賃金計算したから、上告人の作成した請求書は昭和四二年三月分から昭和五〇年八月分まで当然に一枚も存在しない。

(三) したがって上告人の賃金として給与所得であることは疑問の余地片鱗もなく、また事業所得となる余地もない。

(四) そして賃金は労働基準法一〇八条、同法施行規則五四条、五五条に基づいて作成された賃金台帳に毎月受領の捺印すれば必要にしてかつ十分である。

(五) ところが訴外会社は既述のとおり賃金台帳の作成を怠った結果、総務課長は上告人に対し「現金授受の証拠として会計担当が必要」と詐って有印請求書に変造行使する目的で、毎月上告人から有印受領書を騙取した。

(六) 法人(訴外会社)における経費支出の手続は、支払伝票をもって稟議決裁することを原則とし、請求書が稟議決裁の対象となることはなく、また受領書が稟議決裁の対象となることはなく、支払実行後は請求書、受領書の順に重ねて支払伝票の付属証憑として一件記録に編綴保管すれば必要にして十分なものである。

(七) 前期原則に対する例外の経費支出の非常手段は正当債権者から適法請求書を徴しえない場合に限り有印受領書を稟議決裁に付して有印請求書とみなし経費支出の非常手段とするが、その最適例は実に役務の報償金「謝礼」そのものである。

(八) 仮に上告人の所得が事業所得としても、上告人は原則として一カ月に一二日出勤するため、総務課長はいつでも上告人から適法請求書を徹しうべく、したがって正当債権者から適法請求書を徹しえない例外事由に該当しない致命的矛盾を姙み全く理由とはならない。

(九) 総務課長は上告人から騙取した有印受領書を行使の目的をもって有印請求書とすべく稟議決裁に付して行使して有印請求書に変造し、もって給与所得であるにかかわらず、事業所得を虚構した。

(一〇) 訴外会社は従来上告人の賃金を通貨本人払いのところ銀行振込みに改めたが第一勧銀が発行する「振込金受取書」を行使の目的をもって上告人の請求書とすべく稟議決裁に付して行使し上告人の請求書に変造し、もって給与所得であるにかかわらず事業所得を虚構した。

(一一) 総務課長は上告人に対し毎月賃金計算して賃金として支払いをしたから訴外会社の内部手続において勘定科目「人件費、雑給」と仕訳すべきであるにかかわらず、支払伝票で債務を「謝礼」とする内容虚偽文書の作成にとどまらず、ほしいまに勘定科目「共通経費、雑費」と仕訳して給与所得から事業所得への虚構を完成した。

3 しかるに総務課長は上告人を欺罔して受領書を、騙取しそのまま請求書に変造したから債権は賃金の「日給月給」であるにかかわらず支払伝票の債務は「謝礼」であって両者に同一性がなく支払手続に重大かつ明白な瑕疵があり、無効というべきである。

(一) 会計手続において請求書、支払伝票及び受領書は三位一体のものであって、債権者、取引内容、及び金額が完全一致の同一性を絶対不可欠の要件とすることは、条理、社会通念ないし経験則において明らかである。

(二) 総務課長は上告人に対し昭和四二年四月三日同年三月分の賃金を支払ったが、一方自らあらかじめ準備した受領書の債権を「経営コンサルタント料」(七日分)と記載したにかかわらず、他方支払伝票の債務はこれを全く異質の「謝礼」(七日分)とするものであるから、両者は全く同一性を有しない。

(三) また総務課長は上告人に対し同年四月分から受領書の債権を日給月給の「指導料」(××日分)とあるにかかわらず、支払伝票の債務はこれと全く異質の「謝礼」(××日分)とするものであるから、両者は全く同一性を有しない。

(四) さらに総務課長は上告人に対し受領書の債権は通勤費として「交通費」(××回分)の記載があるにかかわらず、支払伝票の債務は鉄道賃、車馬賃、宿泊料日当、食卓料など旅費項目の特定がなく、これを単に「旅費」とするものであるから、両者は全く異質のもので同一性を有しない。

(五) 総務課長は上告人の受領書をそのまま請求書に変造したから請求書と受領書は完全に一致するところ、支払伝票の起票は請求書に基づくべきにかかわらず、訴外会社はこれを欠くから支払手続に重大かつ明白な瑕疵があり無効というべきである。

(六) さらに訴外会社が上告人に対してなした事業所得はその前提たる支払手続に重大かつ明白な瑕疵があるから違法無効である。

4 総務課長が旭硝子において二〇余年間厚生専門職を歴任し常時慣行した「謝礼」の支払手続は次のとおり準委任契約の成立要件皆無であるにかかわらずあえてなされたから極めて不自然であり、条理及び経験則に反する違法がある。

(一) 準委任契約の生命である委任事務としてテーマとその範囲、程度の特定がない。

(二) 準委任契約における案件実施の契約期間がない。

(三) 上告人の報酬基準に基づく請求書が一枚もない。

(四) 報酬と賃金とは何人も一見容易に識別可能な著しい金額の格差があるにかかわらず、社内賃金水準の枠内の賃金にしかすぎない。

(五) 上告人は準委任契約の締結にさいし、「委嘱契約書」を作成交換するところ、雇用契約であるから「委嘱契約書」がない。

5 総務課長は、顧問弁護士神山欣治と上告人を準委任契約と雇用契約との区別を十分に意識して次のとおり差別的取扱いをした。

(一) 弁護士神山欣治の顧問料を事業所得とし、源泉徴収所得税まで会社負担としたが、上告人に対してはこのようなことをしなかった。

(二) 弁護士神山欣治に対しては、盆・暮の贈答を怠ったことがないが、上告人に対しては八年有余の期間贈答を受けたことがただの一回もなかった。

(三) 弁護士神山欣治に対する支払伝票の起票は事業所得として庶務班主任が担当したが、上告人に対する支払伝票の起票は給与所得として労政班主任が担当した。

(四) 弁護士神山欣治の場合は訴外会社の担当者が右法律事務所に出張相談し、かつ月間相談の有無にかかわらず固定額の顧問料一カ月手取金三万円を支払ったが、上告人の場合は上告人が訴外会社に出勤して時間的空間的に拘束され、命令された業務に従事して一カ月一二日分の日給月給が支払われた。

(五) したがって同一の「事業所得」とするにかかわらず、弁護士神山欣治に対しては、事業所得とその原因事実たる準委任契約が対応するが、上告人に対しては、事実所得とその原因事実たる準委任契約とが虚構に基づくため対応しない矛盾があった。

五 要するに総務課長は自己保身と会社保全とを直接の動機とし、労働協約違反と労組欺罔の発覚回避を企図して上告人を犠牲に供すべく不当かつ違法に職務権限を濫用した。

1 総務課長は労組に対する労働協約違反と欺罔とは絶対的に会社不信の原因であるから極めて責任の重大さを認識して万策を弄し真実の発覚阻止を計画実施した。

(一) 総務課長は訴外会社の庶務、人事、老政、厚生の責任者である

(二) 夙に訴外会社は労組に対し主要または重要な人事については事前協議を経て労組の証人を要する旨の労働協約があった

(三) そして上告人と雇用契約することは重要な人事に該当する

(四) しかるに総務課長は労組に対し事前協議を怠った

(五) 事前協議違反を隠蔽するため労組に対し上告人と準委任契約をしたと欺罔した

(六) 労働協約違反と欺罔とは会社不信の爆発であり、労資関係の決定的崩壊に連なる

(七) したがって事実がは発覚すれば総務課長の責任辞職は免がれないし、労働倒産も避けられない

(八) そこで総務課長は、目的のためには手段を選ばず、あらゆる手段を講じて真実の発覚阻止を計画実施した。

2 かくして総務課長は既述のとおり消極的には労組・上告人間の情報遮断と証拠絶滅を実行し、また積極的には自己の掌中にある内部手続において、給与所得を事業所得に虚構したが、その手段を要約すれば次のとおりである。

(一) 訴外会社が上告人に対し毎月賃金計算したから準委任契約とすべき上告人の請求書が一枚も存在しない

(二) しかるに総務課長は上告人に対し公序良俗に反するにかかわらず現金授受の証拠を詐って毎月賃金の受取書を騙取した。

(三) そして総務課長は騙取した受領書を行使の目的をもって稟議決裁に付して行使しすべて上告人の請求書に変造した。

(四) 訴外会社は上告人を受取人とする第一勧業銀行発行の「振込受取書」まで行使の目的をもって稟議決裁に付し行使しすべて上告人の請求書に変造した。

(五) 総務課長は支払伝票の際し債務が「日給月給」であることを知りながら、あえて事業所得とすべく、ほしいままに旭硝子厚生専門職時代に常時慣用した事業所得の債務「謝礼」と記載した。

(六) また総務課長は支払伝票の起票にさいし債権が通勤費の「交通費」であることを知りながら、あえて事業所得とすべく、ほしいままに鉄道賃、車馬賃、宿泊料、日当、食卓料などの旅費項目の特定を怠って単に「旅費」と記載した。

(七) さらに総務課長は、支払伝票において上告人の有印受領書をそのまま有印請求書に変造した請求書に基づいて起票すべきにかかわらず右請求書の債権と異質の全く同一性のない債務を対象として起票したから、支払手続に重大かつ明白な瑕疵があり無効である。

(八) かくて総務課長は債務が上告人の日給月給であるから勘定科目は「人件費、雑給」と仕訳すべきことを知りながら、あえて事業所得とすべく、ほしいままに勘定科目を「共通経費、雑費」と仕訳した。

(九) 訴外会社は上告人に対し給与所得の源泉徴収票を交付すべき義務あることを知りながら、目的のためには手段を選ばず、納税者に対し行政救済の方法が全くなく、立法の欠缺と飯能税務署による税務調査の皆無を奇貨として毎年上告人から異議の申立があるにかかわらず言を左右にして応ぜず上告人に支払調書を交付し、もって事業所得の虚構を完成した。

以上

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